期間:2011年9月17日(土)~2012年4月8日(日)
「どうしたというのだろう?音楽はためらうように、うねりながらはじまった。散策か行進のように。夜の 世界を歩む神のように。ミックの外の世界はにわかに凍りつき、音楽のあのすべり出しの部分だけが、胸 の中で赤く燃えていた。そのあとの音楽は耳にもはいらず、彼女はただ拳を固く握りしめ、凍りついたよ うにすわったまま待ち受けていた。しばらくすると、音楽はふたたびはげしく、声高にうたいだした。もは や神とは何の関係もなかった。これこそミックであり、昼日中を歩むミック、夜をただひとり歩くミック・ ケリーだった。・・・この音楽は彼女であり、ほんとうの、ありのままのミック自身であった。」(カーソン・マッカラーズ、河野一郎訳『心は孤独な狩人』新潮社、1972年、pp147-148)
カーソン・マッカラーズの小説「心は孤独な狩人」で語られる音楽観、人と音楽の世界と深く共鳴し合うル クセンブルグ出身のツェ・スーメイの《エコー》《ヤドリギ楽譜》を軸として、「サイレント・エコー – コレク ション展II 」では、当館コレクションの潜在する未だ語られたことのない世界の展観を試みる。
《エコー》《ヤドリギ楽譜》で提示される、身体、音、技術、自己をとりまくあらゆる事象との関わりや融合か ら生み出される世界を根底に据え、こうした音楽観を出発点に、かたちが造形芸術である所以も同様に自 己、技術、対象の十全な融合によってこそ作り出される造形芸術の世界を紹介する。この試みは、「工芸的造 形」という概念をめぐって近年展開されている視座を起点としている。「素材/自然/環境/他者に寄り添 い、自らを物事の生成のプロセスに投げ入れ、親密な交流を図ることによって、固有の技術を見いだしつつ 新しいかたちを生み出す造形及び造形行為」という美術表現を評価する新しい眼差しに依り、ツェ・ スーメイ、アニッシュ・カプーア、粟津潔、山崎つる子、久世建二、角永和夫による、自己、他者、素材といった あらゆるものとの対話の営みを検証する。 彼らの作品にみる静かな対話や共鳴の様相は、人がこの世界とどのように関わり、生きるかという人間の 存在性について物語り、どんなに困難な時代においても新たな可能性、希望を我々に示し続けるだろう。
ピーター・マクドナルド: 訪問者
期間:2011年4月16日(土)~2012年3月20日(火)
今年度の「金沢若者夢チャレンジ・アートプログラム」では初の試みとして海外のアーティストに着目。イギリス在住の若手アーティストで世界が注目するピーター・マクドナルドを招聘し、アート・プロジェクトを展開します。「描くこと」を通じて、人と関わり、ジャンル、ジェンダー、国境、日常と非日常、といった境界を軽やかに超えてゆくマクドナルドを核とし、メンバーが彼の活動に参画することによって、コミュニケーションの多様性と可能性を体験します。館内での絵画作品展示(長期インスタレーションルーム)と壁画インスタレーション制作(展示室13)に始まり、一年を通してこれらの空間を舞台に様々なプログラムを随時併催します。マクドナルドと若者たちが金沢の町や人と交流しながら、作家の絵画世界が町のなかに徐々に浸透し、絵画という根源的な表現言語を通じて、人と人、人と場がしなやかにつながることを目指します。









